最高裁昭和55年10月23日刑集34巻5号300頁・刑訴百選【11版】28事件(強制採尿の可否及び必要な令状の種類)
1 はじめに
本判例は、①捜査手続上の強制処分として被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて尿を採取することの可否、②被疑者からの強制採尿に必要な令状の種類とその形式が問題となりました。また、本判例の事案は本判例が採用した条件付捜索差押許可状(刑訴法218条1項前段、9項)ではなく身体検査令状(刑訴法218条1項後段)と鑑定処分許可状(刑訴法223条1項)の併用であったため、③強制採尿の過程に適切な条件を付した捜索差押令状によらなかつた不備があつても採尿検査の適法性がそこなわれない(違法収集証拠とならない)かが問題となりました。
2 前提となる知識
⑴刑訴法99条(222条1項本文前段で準用)
①裁判所は、必要があるときは、証拠物又は没収すべき物と思料するものを差し押えることができる。ただし、特別の定めのある場合は、この限りでない。
② 差し押さえるべき物が電子計算機であるときは、当該電子計算機に電気通信回線で接続している記録媒体であつて、当該電子計算機で作成若しくは変更をした電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)又は当該電子計算機で変更若しくは消去をすることができることとされている電磁的記録を保管するために使用されていると認めるに足りる状況にあるものから、その電磁的記録を当該電子計算機又は他の記録媒体に複写した上、当該電子計算機又は当該他の記録媒体を差し押さえることができる。
③ 裁判所は、差し押えるべき物を指定し、所有者、所持者又は保管者にその物の提出を命ずることができる。
⑵刑訴法102条(222条1項本文前段で準用)
裁判所は、必要があるときは、被告人の身体、物又は住居その他の場所に就き、捜索をすることができる。
② 被告人以外の者の身体、物又は住居その他の場所については、押収すべき物の存在を認めるに足りる状況のある場合に限り、捜索をすることができる。
⑶刑訴法218条
検察官、検察事務官又は司法警察職員は、犯罪の捜査をするについて必要があるときは、裁判官の発する令状により、差押え、捜索、電磁的記録提供命令又は検証をすることができる。この場合において、身体の検査は、身体検査令状によらなければならない。
②から⑧まで略
⑨ 裁判官は、身体の検査に関し、適当と認める条件を付することができる。
⑷刑訴法219条
①前条の令状には、被疑者若しくは被告人の氏名、罪名、差し押さえるべき物、捜索すべき場所、身体若しくは物、提供させるべき電磁的記録、提供させるべき者及び提供の方法、検証すべき場所若しくは物又は検査すべき身体及び身体の検査に関する条件、有効期間及びその期間経過後は差押え、捜索若しくは検証に着手し、又は電磁的記録提供命令をすることができず令状はこれを返還しなければならない旨並びに発付の年月日その他裁判所の規則で定める事項を記載し、裁判官が、これに記名押印しなければならない。
②以下略
⑸覚醒剤取締法
19条
次に掲げる場合のほかは、何人も、覚醒剤を使用してはならない。
① 覚醒剤製造業者が製造のため使用する場合
② 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者が施用する場合
③ 覚醒剤研究者が研究のため使用する場合
④ 覚醒剤施用機関において診療に従事する医師又は覚醒剤研究者から施用のため交付を受けた者が施用する場合
⑤ 法令に基づいてする行為につき使用する場合
41条の3 次の各号のいずれかに該当する者は、10年以下の拘禁刑に処する。
① 第19条(使用の禁止)の規定に違反した者
②以下略
3 問題の所在
「1はじめに」で述べたとおりですが、実務上、令状の種類及び方式が分かれていたことから、その解釈の統一が求められていました。
本判例は、①被疑者の体内から導尿管(カテーテル)を用いて強制的に尿を採取することは、捜査手続上の強制処分として絶対に許されないものではなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経たうえ、被疑者の身体の安全と人格の保護のための十分な配慮のもとに行うことが許されること、②捜査機関が強制採尿をするには捜索差押令状によるべきであり、右令状には、医師をして医学的に相当と認められる方法で行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であるということを明らかにしました。
令状の種類に関しては鑑定処分許可状では直接強制ができないことと関連して議論がなされていました。すなわち、鑑定処分許可状に関する刑訴法225条4項は刑訴法168条6項(※法改正後は8項になります)は直接強制に関する刑訴法139条を準用しておらず、また225条4項は刑訴法172条を準用していないため刑訴法139条を用いることができないという課題をどう克服するかということが問題となります。
4 判旨
https://www.courts.go.jp/hanrei/50210/detail2/index.html
「弁護人渡辺明治の上告趣意第1の1は、憲法37条2項違反をいうが、その実質は単なる法令違反の主張であり、同第1の2、第2の1、第2の2の(1)は、憲法31条違反をいうが、その実質は事実誤認、単なる法令違反の主張であり、同第2の2の(2)のうち、憲法31条違反をいう点の実質は単なる法令違反の主張であり、憲法38条1項違反をいう点は、尿の採取は供述を求めるものではないから、所論は前提を欠き、その余は事実誤認、量刑不当の主張であつて、刑訴法405条の上告理由にあたらない。
しかしながら、所論にかんがみ、職権をもつて調査するに、本件の採尿検査を違法であるとした原判断は、次の理由により法令に違反したというべきである。
一 原判決の認定した本件採尿検査の経過は、次のとおりである。(1)昭和52年6月28日午前10時ころ、愛知県江南警察署警察官Aらは、被告人を覚せい剤の譲渡しの被疑事実で逮捕した。(2)右Aは、被告人の両腕に存する静脈注射痕様のもの、その言語・態度などに照らし、覚せい剤の自己使用の余罪の嫌疑を抱き、尿の任意提出を再三にわたり求めたが、被告人は拒絶し続けた。(3)翌29日午後4時ころ、同署は、強制採尿もやむなしとして身体検査令状及び鑑定処分許可状の発付を得た。(4)同日夕刻鑑定受託者である医師尾関一郎は、強制採尿に着手するに先立ち、被告人に自然排尿の機会を与えたのち、同日午後7時ころ、同署医務室のベッド上において、数人の警察官に身体を押えつけられている被告人から、ゴム製導尿管(カテーテル)を尿道に挿入して約100CCの尿を採取した。(5)被告人は、採尿の開始直前まで採尿を拒否して激しく抵抗したが、開始後はあきらめてさして抵抗しなかつた。(6)同署は、同医師から、採取した尿の任意提出を受けてこれを領置し、右尿中の覚せい剤含有の有無等につき愛知県警察本部犯罪科学研究所に対し鑑定の嘱託手続をとつた。
二 尿を任意に提出しない被疑者に対し、強制力を用いてその身体から尿を採取することは、身体に対する侵入行為であるとともに屈辱感等の精神的打撃を与える行為であるが、右採尿につき通常用いられるカテーテルを尿道に挿入して尿を採取する方法は、被採取者に対しある程度の肉体的不快感ないし抵抗感を与えるとはいえ、医師等これに習熟した技能者によって適切に行われる限り、身体上ないし健康上格別の障害をもたらす危険性は比較的乏しく、仮に障害を起こすことがあつても軽微なものにすぎないと考えられるし、また、右強制採尿が被疑者に与える屈辱感等の精神的打撃は、検証の方法としての身体検査においても同程度の場合がありうるのであるから、被疑者に対する右のような方法による強制採尿が捜査手続上の強制処分として絶対に許されないとすべき理由はなく、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべきであり、ただ、その実施にあたっては、被疑者の身体の安全とその人格の保護のため十分な配慮が施されるべきものと解するのが相当である。
そこで、右の適切な法律上の手続について考えるのに、体内に存在する尿を犯罪の証拠物として強制的に採取する行為は捜索・差押の性質を有するものとみるべきであるから、捜査機関がこれを実施するには捜索差押令状を必要とすると解すべきである。ただし、右行為は人権の侵害にわたるおそれがある点では、一般の捜索・差押と異なり、検証の方法としての身体検査と共通の性質を有しているので、身体検査令状に関する刑訴法218条5項(※2026年7月31日現在は9項)が右捜索差押令状に準用されるべきであって、令状の記載要件として強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件の記載が不可欠であると解さなければならない。
三 これを本件についてみるのに、覚せい剤取締法41条の2第1項3号、19条に該当する覚せい剤自己使用の罪は10年以下の懲役刑(※現在は「拘禁刑」)に処せられる相当重大な犯罪であること、被告人には覚せい剤の自己使用の嫌疑が認められたこと、被告人は犯行を徹底的に否認していたため証拠として被告人の尿を取得する必要性があったこと、被告人は逮捕後尿の任意提出を頑強に拒み続けていたこと、捜査機関は、従来の捜査実務の例に従い、強制採尿のため、裁判官から身体検査令状及び鑑定処分許可状の発付を受けたこと、被告人は逮捕後33時間経過してもなお尿の任意提出を拒み、他に強制採尿に代わる適当な手段は存在しなかったこと、捜査機関はやむなく右身体検査令状及び鑑定処分許可状に基づき、医師に採尿を嘱託し、同医師により適切な医学上の配慮の下に合理的かつ安全な方法によって採尿が実施されたこと、右医師による採尿に対し被告人が激しく抵抗したので数人の警察官が被告人の身体を押えつけたが、右有形力の行使は採尿を安全に実施するにつき必要最小限度のものであったことが認められ、本件強制採尿の過程は、令状の種類及び形式の点については問題があるけれども、それ以外の点では、法の要求する前記の要件をすべて充足していることが明らかである。
令状の種類及び形式の点では、本来は前記の適切な条件を付した捜索差押令状が用いられるべきであるが、本件のように従来の実務の大勢に従い、身体検査令状と鑑定処分許可状の両者を取得している場合には、医師により適当な方法で採尿が実施されている以上、法の実質的な要請は十分充たされており、この点の不一致は技術的な形式的不備であつて、本件採尿検査の適法性をそこなうものではない。
原判決が本件採尿検査を違法視しているのは前記説示のとおり法令に違反するものであるが、原判決は採取した尿を資料とした鑑定書の証拠能力は肯定しているので、右違法は判決に影響を及ぼすものとはいえない。
よつて、刑訴法414条、386条1項3号、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」(一部表記を改めています。)
5 解説(本判例の評釈である判例タイムズ424号52頁)
「一 本決定は、高裁判例上見解の対立していたカテーテルを使用して被疑者の体内の尿を強制的に採取することの適否の問題につき、最高裁が適法説の立場をとることを明らかにした新らしい判断である。
本決定に示された強制採尿が許されるための基準は、今後の実務に参考になるであろう。
二 事案の概要を説明すると、本件は、覚せい剤の譲渡しの嫌疑により逮捕された被告人が、覚せい剤の自己使用の嫌疑をも受け、捜査官からの再三にわたる尿の任意提出の求めを拒絶し続けた末に、令状に基づき強制的にゴム製導尿管(カテーテル)を尿道に挿入されて尿を採取され、鑑定の結果尿中に覚せい剤が検出されたため、覚せい剤の譲渡し及び自己使用の事実で起訴された覚せい剤取締法違反の事案である。
一審判決は、ほぼ公訴事実どおりの事実を認め、被告人を懲役1年2月の実刑に処したが、原審において、本件の強制的な採尿検査の適否及びこれによって採取した尿を資料とする鑑定書の証拠能力の有無が争われるに至つた。
原判決は、本件採尿検査は、被疑者の人格の尊厳を著しく害し、令状の執行手続として許される限度を超え違法であるが、右違法は令状主義の精神を没却するような重大なものであるとは認められないから、採取した尿を資料とする鑑定書の証拠能力に欠けるところはないと判断し、被告人の控訴を棄却して一審判決を維持した。
上告趣意は多岐にわたるが、本件の採尿検査に関する主張として、本件の採尿検査は黙秘権及び拷問の禁止を保障する憲法31条及び38条に違反し、採取した尿を資料とする鑑定書は違法収集証拠として証拠能力を否定されるべきであるから、右鑑定書を証拠として許容した原判決には憲法違反がある旨述べられている。
本決定は弁護人の上告趣意は、刑訴法405条の上告理由にあたらないとして上告を棄却したが、被疑者に対する強制採尿の法律的性質、その許される基準と実施の手続、令状の種類及び形式、本件の採尿検査の適法性等につき詳細な職権判断を加えた。
三 元来、尿は、時間の経過に伴い生理現象として体外に排出される物であり、一般には体外に排出された段階でこれを採取すれば足るであろうから、体内にある段階で尿を強制的に採取することが許されるのは、よくよく例外的な場合であるといえよう。
他方、カテーテルを尿道に挿入して行う尿の採取は、医師等これに習熟した技能者によって適切に行われる限り、当然に身体の損傷を伴うわけではなく、しゅう恥心、名誉感情の侵害の程度も、裸体の身体検査の場合と大差はないから、被疑者があくまで尿の任意提出を拒み、他に代替手段のない真にやむをえない場合にまで尿の採取を断念せねばならないというのも合理的でない。
被疑者に対する強制採尿については、近時、覚せい剤の自己使用の事犯において尿の任意提出を徹底的に拒否する被疑者が比較的増加したことに伴い、捜査上の必要性の見地から、これを是認する見解(澤新「覚せい剤事犯と採尿検査」法律のひろば32巻5号15頁、島田尚武「最近における覚せい剤事犯対策の前進と今後の課題」警察学論集32巻5号32頁)がある反面、その強制処分の被疑者に与える不利益が大きいこと、令状の種類との関係で直接強制の可能な法的根拠が不明確であることなどの見地からこれを疑問視する見解(原田國男「採尿検査をめぐる問題点」警察学論集27巻5号31頁、注釈刑事訴訟法1巻487頁、熊本典道「採尿検査」刑事訴訟法の争点89頁)があり、その中間に位置づけられる見解として、被疑者の抵抗を実力で排除する態様のものを除き是認されるとの見解(小林充「身体検査をめぐる諸問題」司研論集61号93頁)があって学説上対立していた。
裁判例としては、カテーテルを使用した強制採尿の事案は従来みあたらなかつたが、本件の原判決とその直後言い渡された東京高判昭54・2・21とが強制採尿につき、それぞれ違法・適法と相反する判断をし、ここに高裁判例が対立するに至つた(右両判決を対照して問題点の検討を加えた論稿として鈴木義男「尿の強制採取の適否と違法収集証拠排除法則の適用」研修374号43頁、同375号51頁がある)。
本決定は、被疑者に対する強制採尿は、被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、真にやむをえないと認められる捜査上の必要性がある場合には最終的手段として許される旨判断した。
四 被疑者の体内から尿・血液等の体液を強制的に採取することを是認する見解をとる場合において、令状を必要とすることには異論の余地がないが、いかなる令状によるべきかは直接強制の法的根拠との関係で、従来見解の分れていたところである(門馬良夫「身体検査の限界」本誌296号408頁、小瀬保郎「血液検査」演習刑事訴訟法164頁、古川實「鑑定処分許可状」刑事実務ノート3巻357頁、谷沢忠弘「身体検査の限界」捜査法大系III 235頁ほか参照)。
第一の見解は、身体検査令状説であり、検証としての身体検査は身体の内部検査を含み、社会通念上是認される程度の軽微な身体の損傷も許されるとする立場で、刑訴法222条1項の準用する同法139条が直接強制の法的根拠となる。
第二の見解は、鑑定処分許可状説であり、採血のように身体内部に働らきかけて身体の損傷を伴う検査は専門的知識と技術を必要とするから性質上鑑定に属するとする立場で、刑訴法225条は文言上は明らかでないが同法172条の準用ないし類推適用を認める趣旨であると解釈して直接強制の法的根拠とする(小林・前掲)。
第三の見解は、身体検査令状と鑑定処分許可状の併用説であり、基本的には鑑定処分許可状説に立ちながら、直接強制を必要とする場面で身体検査令状に依存する立場である。
本決定は、被疑者に対する強制採尿の法律的性質は、捜索・差押であるとし(したがって、供述を求めるものではないから、憲法38条との関係で憲法問題は生じない)、その実施には、被疑者の身体の安全・名誉感情の保護等の見地から、強制採尿は医師をして医学的に相当と認められる方法により行わせなければならない旨の条件を付した捜索差押令状によるべきことを明らかにした。
身体検査令状説は、従来の検証の概念を拡張しすぎるきらいがあるし、鑑定処分許可状説は、刑訴法の文理解釈の点でやや無理があり、併用説は、論理的に一貫しないなど各説それぞれに難点があることを考えると、むしろ、行為の目的が犯罪の証拠物の収集に向けられていることを踏まえて、捜索差押令状によるのが最も適切であるとされたものであろう。
人の身体の一部(生存している場合)は差差の対象とならないというのが従来の理解であろうが、体内の尿は、いつでも体外に排出できる態勢にある廃棄物であつて、身体の一部でないと考えれば、差押の対象とすることに支障はなかろう。
血液その他の体液については、今後の判例の動向を見守ることとなろう。
……
五 本件の強制採尿の実施に至る経緯及び実施の態様は、本決定中に詳細に判示されている。
本決定によれば、本件の強制採尿は、捜査上真にやむをえない場合に行われたものであつて、その実施の態様も医学的見地から合理的かつ安全であつて、有形力の行使の程度も採尿を安全に実施するにつき必要最小限度の措置であり、法の実質的な要請をすべてみたしていた。
もっとも、令状の種類及び形式の点では、本件においては身体検査令状と鑑定処分許可状の併用によつているが、この点の不一致は、本件の採尿検査の適法性をそこなうものでないことを本決定は明らかにしている。
本決定は、本件の採尿検査を適法と判断したので、違法収集証拠の問題に立ち入るには至らなかった。」
6 関連する判例・裁判例
最高裁令和4年4月28日刑集76巻4号380頁・重要判例解説令和4年度刑訴6事件(https://avantgarde-lawoffice.com/archives/587)と東京高裁令和3年10月29日令和2年(う)第806号・重要判例解説令和5年度刑訴1事件(https://avantgarde-lawoffice.com/archives/1263)があります。
前者の令和4年判例は、被疑者に対して強制採尿を実施することが「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合とは認められないのにされた強制採尿令状の発付は違法であり、警察官らが同令状に基づいて強制採尿を実施した行為も違法であるが、警察官らはありのままを記載した疎明資料を提出して同令状を請求し、裁判官の審査を経て発付された適式の同令状に基づき強制採尿を実施したもので、その執行手続自体に違法な点はなく、「犯罪の捜査上真にやむを得ない」場合であることについて、疎明資料において、合理的根拠が欠如していることが客観的に明らかであったというものではなく、また、警察官らは直ちに強制採尿を実施することなく被疑者に対して尿を任意に提出するよう繰り返し促すなどしていたなど事情の下では、強制採尿手続の違法の程度はいまだ重大とはいえず、同手続により得られた尿の鑑定書等の証拠能力を肯定することができるとした事例判断です。
後者の東京高裁令和3年裁判例は体腔内のマイクロSDカードを採取する際に、本判例が述べた「被疑事件の重大性、嫌疑の存在、当該証拠の重要性とその取得の必要性、適当な代替手段の不存在等の事情に照らし、犯罪の捜査上真にやむをえないと認められる場合には、最終的手段として、適切な法律上の手続を経てこれを行うことも許されてしかるべき」という要件が満たされない場合に違法収集証拠排除法則により派生証拠も含めて証拠排除をした原審を肯定したものです。

