最高裁平成26年3月17日刑集68巻3号368頁・刑訴百選【11版】45事件(包括一罪の訴因の特定・明示等)

1 はじめに

 本判例は、包括一罪を構成する一連の暴行による傷害について,訴因の特定に欠けるところはないとされた事例です。

2 前提となる知識

⑴条文
刑法204条
人の身体を傷害した者は、15年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金に処する。
刑訴法256条3項
公訴事実は、訴因を明示してこれを記載しなければならない。 訴因を明示するには、できる限り日時、場所及び方法を以て罪となるべき事実を特定してこれをしなければならない。
⑵判例
最高裁平成22年3月17日刑集64巻2号111頁(募金詐欺事件)・刑法判例百選【8版】Ⅰ102事件
「1 本件は,被告人が,難病の子供たちの支援活動を装って,街頭募金の名の下に通行人から金をだまし取ろうと企て,平成16年10月21日ころから同年12月22日ころまでの間,大阪市,堺市,京都市,神戸市,奈良市の各市内及びその周辺部各所の路上において,真実は,募金の名の下に集めた金について経費や人件費等を控除した残金の大半を自己の用途に費消する意思であるのに,これを隠して,虚偽広告等の手段によりアルバイトとして雇用した事情を知らない募金活動員らを上記各場所に配置した上,おおむね午前10時ころから午後9時ころまでの間,募金活動員らに,「幼い命を救おう!」「日本全国で約20万人の子供達が難病と戦っています」「特定非営利団体NPO緊急支援グループ」などと大書した立看板を立てさせた上,黄緑の蛍光色ジャンパーを着用させるとともに1箱ずつ募金箱を持たせ,「難病の子供たちを救うために募金に協力をお願いします。」などと連呼させるなどして,不特定多数の通行人に対し,NPOによる難病の子供たちへの支援を装った募金活動をさせ,寄付金が被告人らの個人的用途に費消されることなく難病の子供たちへの支援金に充てられるものと誤信した多数の通行人に,それぞれ1円から1万円までの現金を寄付させて,多数の通行人から総額約2480万円の現金をだまし取ったという街頭募金詐欺の事案である。
 2 そこで検討すると,本件においては,個々の被害者,被害額は特定できないものの,現に募金に応じた者が多数存在し,それらの者との関係で詐欺罪が成立していることは明らかである。弁護人は,募金に応じた者の動機は様々であり,錯誤に陥っていない者もいる旨主張するが,正当な募金活動であることを前提として実際にこれに応じるきっかけとなった事情をいうにすぎず,被告人の真意を知っていれば募金に応じることはなかったものと推認されるのであり,募金に応じた者が被告人の欺もう行為により錯誤に陥って寄付をしたことに変わりはないというべきである。
 この犯行は,偽装の募金活動を主宰する被告人が,約2か月間にわたり,アルバイトとして雇用した事情を知らない多数の募金活動員を関西一円の通行人の多い場所に配置し,募金の趣旨を立看板で掲示させるとともに,募金箱を持たせて寄付を勧誘する発言を連呼させ,これに応じた通行人から現金をだまし取ったというものであって,個々の被害者ごとに区別して個別に欺もう行為を行うものではなく,不特定多数の通行人一般に対し,一括して,適宜の日,場所において,連日のように,同一内容の定型的な働き掛けを行って寄付を募るという態様のものであり,かつ,被告人の1個の意思,企図に基づき継続して行われた活動であったと認められる。加えて,このような街頭募金においては,これに応じる被害者は,比較的少額の現金を募金箱に投入すると,そのまま名前も告げずに立ち去ってしまうのが通例であり,募金箱に投入された現金は直ちに他の被害者が投入したものと混和して特定性を失うものであって,個々に区別して受領するものではない。以上のような本件街頭募金詐欺の特徴にかんがみると,これを一体のものと評価して包括一罪と解した原判断は是認できる。そして,その罪となるべき事実は,募金に応じた多数人を被害者とした上,被告人の行った募金の方法,その方法により募金を行った期間,場所及びこれにより得た総金額を摘示することをもってその特定に欠けるところはないというべきである。」

3 問題の所在

 「訴因が特定されているかどうかを判断する基準に関し,識別説と防御権説との対立があるとされる。すなわち,訴因の特定が求められる趣旨が①裁判所に対し審判の対象を限定するとともに②被岩人に対し防御の範囲を示すことにあるとの理解を前提として(最大判昭和37年11月28日刑果16巻11号633頁=いわゆる白山丸事件判決〔本書A15事件〕参照)、 (ⅰ)「識別説」とは.訴因の審判対象を画する機能(①)を重視し審判対象の画定がなされていればそれに応じて防御の範囲も限定されるので被岩人の防御権を保障する機能(かも満たされるとの考え方から.公訴事実を他の事実と区別できる程度に記載すべきであり,それで足りるという見解であり,(2)「防御権説]とは,②の機能を全うするためには.公訴事実を他の事実と区別てきるだけでは足りず,防御権行使に十分な記載がなされなければならないという見解であるとされるが,実務においては,おおむね識別説による運用が定着しているといわれる(止川靖夫•最判解刑事篇平成26年度100頁参照)……。」「識別説に沿って考えると,訴因が特定されているといえるためには特定の構成要件に該当する事実が他の事実と区別できる程度に具体的に示されていなければならないこととなる。」

4 判旨

 「弁護人小坂井久,同鈴木一郎,同井原誠也の上告趣意は,憲法違反,判例違反をいう点を含め,実質は単なる法令違反,事実誤認の主張であり,被告人本人の上告趣意は,事実誤認の主張であって,いずれも刑訴法405条の上告理由に当たらない。
 なお,所論に鑑み,第1審の公判前整理手続段階において検察官が2件の傷害被告事件につき変更請求をして許可された各訴因の特定について,職権で判断する。
 1 このうちAを被害者とする傷害被告事件(以下「A事件」という。)の訴因は,「被告人は,かねて知人のA(当時32年)を威迫して自己の指示に従わせた上,同人に対し支給された失業保険金も自ら管理・費消するなどしていたものであるが,同人に対し,(1)平成14年1月頃から同年2月上旬頃までの間,大阪府阪南市(中略)のB荘C号室の当時のA方等において,多数回にわたり,その両手を点火している石油ストーブの上に押し付けるなどの暴行を加え,よって,同人に全治不詳の右手皮膚剥離,左手創部感染の傷害を負わせ,(2)Dと共謀の上,平成14年1月頃から同年4月上旬頃までの間,上記A方等において,多数回にわたり,その下半身を金属製バットで殴打するなどの暴行を加え,よって,同人に全治不詳の左臀部挫創,左大転子部挫創の傷害を負わせたものである。」というものである。また,Eを被害者とする傷害被告事件(以下「E事件」という。)の訴因は,「被告人は,F,G及びHと共謀の上,かねてE(当時45年)に自己の自動車の運転等をさせていたものであるが,平成18年9月中旬頃から同年10月18日頃までの間,大阪市西成区(中略)付近路上と堺市堺区(中略)付近路上の間を走行中の普通乗用自動車内,同所に駐車中の普通乗用自動車内及びその付近の路上等において,同人に対し,頭部や左耳を手拳やスプレー缶で殴打し,下半身に燃料をかけ,ライターで点火して燃上させ,頭部を足蹴にし,顔面をプラスチック製の角材で殴打するなどの暴行を多数回にわたり繰り返し,よって,同人に入院加療約4か月間を要する左耳挫・裂創,頭部打撲・裂創,三叉神経痛,臀部から両下肢熱傷,両膝部瘢痕拘縮等の傷害を負わせたものである。」というものである。
 2 これら訴因に加え,各事件に関し検察官が提出した証明予定事実記載書面の内容及び検察官による釈明内容も踏まえると,検察官は,次の趣旨の主張をしていたものである。すなわち,
 (1) A事件については,① Aに対する傷害は,約4か月の期間内において,被告人が暴力等を通じてAを支配し,経済面や居住場所も統制する状況の中で,A方住居等というある程度限定された場所で,憂さ晴らしや面白半分という共通の動機に基づきなされた暴行により生じたものであり,② その暴行と傷害は,(ア)多数の機会に,被告人が,Aに対し,その両手を燃焼中の石油ストーブの上に押し付けることを主とする暴行を加えて,両手に熱に起因する傷害を負わせ,(イ)多数の機会に,被告人又は被告人から命じられた共犯者が,Aに対し,その下半身を金属製バットで殴打することを主とする暴行を加えて,左臀部挫創,左大転子部挫創の傷害を負わせ,(ウ)このような同じ態様の暴行の反復累行により,個別機会の暴行との対応関係を個々には特定し難いものの,これら傷害を発生させた上で,拡大ないし悪化させて,結局,全治不詳の右手皮膚剥離,左手創部感染,左臀部挫創,左大転子部挫創の傷害を負わせたものであることから,③ 一連の暴行により②(ウ)の傷害を生じさせたことを1個の公訴事実として訴因を明示,特定したものである。
 (2) E事件については,① Eに対する傷害は,約1か月の期間内において,被告人が,Eを運転手として使い,暴力等を通じて服従させる状況の中で,当時の被告人方住居と被告人が関係する暴力団事務所との間を往復する自動車内,同住居付近に駐車中の自動車内及びその付近路上等というある程度限定された場所で,自己の力の誇示,配下の者に対するいたぶりや憂さ晴らしという共通の動機に基づきなされた暴行により生じたものであり,② その暴行と傷害は,(ア)多数の機会に,被告人が,Eに対し,その頭部や左耳を拳やスプレー缶で殴打することを主とする暴行を加えて,左耳挫・裂創,頭部打撲・裂創の傷害を負わせ,(イ)特定の機会に,被告人が,Eに対し,その顔面をプラスチック製の角材で殴る暴行を加えて,三叉神経痛等の傷害を負わせ,(ウ)多数の機会に,被告人又は被告人から命じられた共犯者らが,Eに対し,下半身に燃料をかけライターで点火して燃やし,下半身を蹴り付ける暴行を加えて,臀部から両下肢の一部範囲の熱傷や両膝部への傷害を負わせ,(エ)このうち(ア)及び(ウ)については,同じ態様の暴行の反復累行により,個別機会の暴行との対応関係を個々には特定し難いものの,これら傷害を発生させた上で,拡大ないし悪化させて,結局,(イ)の点を含め,入院加療約4か月間を要する左耳挫・裂創,頭部打撲・裂創,三叉神経痛,臀部から両下肢熱傷,両膝部瘢痕拘縮等の傷害を負わせたものであることから,③ 一連の暴行により②(エ)の傷害を生じさせたことを1個の公訴事実として訴因を明示,特定したものである。
 3 上記2の検察官主張に係る一連の暴行によって各被害者に傷害を負わせた事実は,いずれの事件も,約4か月間又は約1か月間という一定の期間内に,被告人が,被害者との上記のような人間関係を背景として,ある程度限定された場所で,共通の動機から繰り返し犯意を生じ,主として同態様の暴行を反復累行し,その結果,個別の機会の暴行と傷害の発生,拡大ないし悪化との対応関係を個々に特定することはできないものの,結局は一人の被害者の身体に一定の傷害を負わせたというものであり,そのような事情に鑑みると,それぞれ,その全体を一体のものと評価し,包括して一罪と解することができる。そして,いずれの事件も,上記1の訴因における罪となるべき事実は,その共犯者,被害者,期間,場所,暴行の態様及び傷害結果の記載により,他の犯罪事実との区別が可能であり,また,それが傷害罪の構成要件に該当するかどうかを判定するに足りる程度に具体的に明らかにされているから,訴因の特定に欠けるところはないというべきである。
 よって,刑訴法414条,386条1項3号,刑法21条により,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり決定する。」

5 解説(判例タイムズ1404号99頁)

 「1 事案の概要
 (1) 本件は,殺人,傷害致死,死体遺棄各1件と傷害7件からなる事案であるところ,このうち傷害2件につき,一定の期間内に多数回の暴行を加えたことによる傷害の公訴事実について訴因不特定の主張があり,その前提として包括一罪とみてよいかが問題となったものである。すなわち,それら各傷害事件の訴因(本件決定の職権判断部分1に記載されている。)は,約4か月又は約1か月という一定期間内に被害者に対し繰り返し暴行を加え,傷害を負わせたことが,それぞれ一つの傷害の公訴事実として記載されており,個別機会の暴行の日時等や,それら暴行に対応する傷害結果の発生を個々に特定して記載するものではなかった。これについて,1審では,弁護人から訴因不特定の違法がある旨の主張がなされ,1審判決は,この2件の傷害はいずれも包括一罪を構成するとの判断を前提として,訴因の特定に欠けるところはない旨判断し,原判決もこれを是認した。
 (2) 上告趣意では,大要,「個々の機会の暴行により傷害を負わせた事実ごとに傷害罪が成立し,個々に訴因を特定することを要する。各傷害事件が包括一罪に当たり,本件程度の訴因の特定で足りるとの原判断は,憲法31条等に違反し,判例に違反する」旨の主張があり,本決定は,これら憲法違反,判例違反の主張を実質は罪数判断や訴因の特定に関する単なる法令違反の主張と解した上で,職権による判断を示したものである。
 2 罪数
 (1) 本件のような一定の期間内に反復された複数の行為と法益侵害がある場合に包括一罪と認めた判例としては,麻薬施用者免許を受けている医師による同一の麻薬中毒患者に対する多数回の麻薬施用(最二小判昭31.8.3刑集10巻8号1202頁,判タ63号48頁)や麻薬交付(最三小判昭32.7.23刑集11巻7号2018頁),被害者の子女を一流歌手として世に出すための運動費という名目で,1か月弱の間に5度にわたり金銭を騙取した行為(最一小決昭35.6.16裁判集刑134号87頁),同一の登録商標の商標権侵害行為を継続した場合(最三小決昭41.6.10刑集20巻5号429頁,判タ194号131頁)についてのものがあるほか,約2か月間にわたり多数の通行人から現金を騙しとった街頭募金詐欺を,同詐欺の特徴に鑑みて一体のものと評価し包括一罪と解することができるとしたもの(最二小決平22.3.17刑集64巻2号111頁,判タ1325号86頁)がある。なお,包括一罪について,多くの論者は,複数の法益侵害事実が存するにもかかわらず一罪として処理する根拠を,法益侵害の一体性と行為(主観面を含む)の一体性に求めているところ,これら諸判例も,そのような観点を踏まえて判断しているものと理解できる。
 (2) ところで,最高裁判例で,ある程度の間隔を置いて暴行を反復し,傷害を負わせた事例について,その罪数につき判示したものは見当たらず,高裁判例としても,1時間弱のうちの2度の機会に同じ建物内で同じ被害者に対し暴行を加え,傷害を負わせた事案で包括一罪と判断したもの(東京高判昭52.10.24刑裁月報9巻9~10号636頁)が見られる程度である。ところが,近年,配偶者・同棲相手に対する暴力(いわゆるDV)や児童虐待等の事案で,数日間ないし数か月間にわたり繰り返し暴行を加え,傷害を負わせたことについて,検察官が一罪として起訴する事例が散見されるようになった。そうした事件では,弁護人が訴因不特定を理由に公訴棄却判決を求めることがあり,地裁レベルでは,訴因の特定についての判断の前提として,傷害の包括一罪に当たる旨判示するものが見られたが,高裁レベルの判断は,本件の原判決以外には見当たらない。
 (3) そのような中,本決定は,本件2事件の事実関係を踏まえた上で,学説が包括一罪を認める根拠とし,従来の判例も前提としてきたと考えられる,法益侵害の一体性と主観面を含む行為の一体性に着目して,「全体を一体のものと評価し,包括して一罪と解することができる」旨を判示したものである。
 3 訴因の特定
 (1) 一般に,訴因の機能,目的は,「審判対象の画定」と「被告人に対する防禦範囲の明示」の二つがあるとされており,判例(最大判昭37.11.28刑集16巻11号1633頁,判タ140号69頁)も,刑訴法256条3項の規定の所以は,「裁判所に対し審判の対象を限定するとともに,被告人に対し防禦の範囲を示すことを目的とするものと解される」と判示している。訴因の特定を要する程度について,学説上は,この両機能のうち前者を重視し,訴因は,他の犯罪事実と識別し得る程度の記載を要し,それで足りる(審判対象が画定されれば,同時に防御範囲も明示されるから,後者の機能も果たされる)という見解(識別説)と,後者を重視し,審判対象の画定に必要な範囲にとどまらず,被告人の防御権の行使に十分な程度の記載を要するとの見解(防御権説)との争いがあったが,実務では,識別説による運用が定着している。
 (2) 訴因の特定やこれと関連する判決書における罪となるべき事実の摘示(刑訴法335条1項)に関し判示した判例は相当数あるが,このうち,多数の行為がある場合についてのものとしては,常習賭博罪の判決書における罪となるべき事実の摘示についてのもの(最三小決昭61.10.28刑集40巻6号509頁,判タ624号140頁),麻薬特例法5条所定の罪(業としての営利目的覚せい剤譲渡等)の訴因の特定についてのもの(最一小決平17.10.12刑集59巻8号1425頁,判タ1197号145頁),包括一罪を構成する街頭募金詐欺の判決書における罪となるべき事実の摘示についてのもの(前記最二小決平22.3.17)があり,これら判例は,全体として特定することで足りる旨の判断を示している。これは,そのような常習犯,営業犯,包括一罪の事案では,犯罪を構成する個々の行為の個性・独自性は捨象されることから,その個別の特定は不要であり,全体として特定(他の犯罪事実との区別・識別)されていれば足りるとの立場と考えられ,識別説からの当然の帰結ともいえると思われる。
 (3) 本決定は,包括一罪を構成する一連の暴行による傷害について,本件のような訴因,すなわち,個別機会の暴行の日時等が記載されておらず,各機会の暴行と傷害の発生,拡大等との対応関係が個々に特定されていない訴因であっても,共犯者,被害者,期間,場所,暴行の態様及び傷害結果を記載することをもって,訴因の特定に欠けるところはない旨判示したものであり,これまでの判例と同様の立場からの判断と考えられる。
 4 最後に
 (1) 以上のとおり,本決定の各判示は,従来の判例の立場から自然な結論と考えられるものの,罪数判断,訴因の特定についての判断の双方ともに,同一の被害者に対し一定の期間内に反復累行された一連の暴行により傷害を負わせたという事案において,最高裁として初めての判断を示したものであり,類似事案,特に,DVや児童虐待等の事案の公訴提起や,1審における手続進行の在り方に影響するため,参照価値は大きいと思われる。
 (2) なお,訴因の特定としては本件程度で足りるとはいえ,被告人の防御の観点では,個々の暴行や受傷についても,できるだけ具体的に示すことが望ましく,本件のように公判前整理手続に付された事件でいえば,当事者及び裁判所は,証明予定事実記載書面の記載,検察官の釈明,証拠開示等を通じて,被告人の防御の観点から不都合が生じないように努めるべきものと思われる。この点,本件では,記録によれば,公判前整理手続の過程において,検察官による証明予定事実の記載や釈明として,各被害者が医療機関を受診した日にちと傷害結果の診断内容を個別具体的に明示し,個別傷害とその原因となった暴行態様との対応関係を特定し,暴行の時期及び場所も相当程度特定している。そのほか,当事者間で行われることであるため詳細は不明であるが,共犯者,目撃者及び被害者(生存している2件目の事件のみ)の各供述調書を含む多数の証拠が開示されていた様子である。」