最高裁令和7年7月11日刑集79巻5号199頁(窃盗、電子計算機使用詐欺、覚醒剤取締法違反被告事件・共謀の有無)
本判例は、共謀に関し判断した事例判断です。
判例を引用します。
https://www.courts.go.jp/hanrei/94272/detail2/index.html
「検察官の上告趣意のうち、判例違反をいう点は、事案を異にする判例を引用するものであって、本件に適切でなく、その余は、事実誤認の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
しかしながら、所論に鑑み、職権をもって調査すると、原判決は、刑訴法411条3号により破棄を免れない。その理由は、以下のとおりである。
第1 第1審判決及び原判決の要旨
1 第1審判決は、覚醒剤取締法違反の罪(使用・所持)及び令和3年11月10日に氏名不詳者らと共謀して現金自動預払機から現金合計198万3000円を引き出して窃取したという窃盗罪のほか、要旨、次のとおりの各犯罪事実を認定し、被告人を懲役4年に処した。
(1) 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、令和3年10月25日から同年12月1日までの間、9回にわたり、保険料の還付金等を受け取ることができる旨誤信させられていたAほか7名に対し、金融機関の従業員になりすました氏名不詳者が電話で指示して、振込送金の操作であると気付かせないまま、現金自動預払機で被告人らの管理する預貯金口座に振込送金する操作を行わせ、同機を管理する金融機関の事務処理に使用する電子計算機に対し、Aら名義の預貯金口座から被告人らが管理する預貯金口座に合計773万1734円を振込送金したとする虚偽の情報を与え、被告人らが管理する口座の残高を合計773万1734円増加させて財産権の得喪、変更に係る不実の電磁的記録を作り、よって、同額相当の財産上不法の利益を得た(以下「本件各電子計算機使用詐欺」という。)。
(2) 被告人は、氏名不詳者らと共謀の上、正当な払戻権限がない他人名義のキャッシュカードを使用して現金を窃取しようと考え、令和3年10月25日から同年12月1日までの間、26回にわたり、被告人が、被告人らの管理する前記口座のキャッシュカードを使用して、現金自動預払機から現金合計722万9000円を引き出してこれを窃取した(以下「本件各窃盗」という。本件各窃盗は、本件各電子計算機使用詐欺の直後に行われており、被告人が本件各窃盗で引き出した現金の額は、本件各電子計算機使用詐欺により増加した残高に対応するものであった。)。
2 これに対し、被告人が控訴し、事実誤認、法令適用の誤りを主張した。原判決は、第1審判決が本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めた点には事実誤認があるとして、第1審判決を破棄して自判し、その余の罪について被告人を懲役3年6月に処し、本件各電子計算機使用詐欺について無罪を言い渡した。その理由の要旨は、以下のとおりである。
第1審判決は、本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めるに当たり、被告人と氏名不詳者らとの間に本件各電子計算機使用詐欺についての意思連絡があったといえるかを十分に検討しておらず、また、被告人が本件各電子計算機使用詐欺の実行行為を何ら分担せず、その内容について全く知らなかったという事案の特質を十分に踏まえておらず、このような判断方法自体不合理である。
証拠関係を踏まえて検討しても、被告人が本件各電子計算機使用詐欺の行為態様等の本質的な部分を含め、その内容を全く把握しておらず、氏名不詳者らにおいても本件各電子計算機使用詐欺に関する被告人の認識の有無について関心を有していなかったことなどからすれば、被告人と氏名不詳者らとの間に本件各電子計算機使用詐欺についての意思連絡があったとは認められない。さらに、被告人が本件各電子計算機使用詐欺の実行行為を何ら分担していないこと、被告人以外にも振込先口座から現金を引き出す役割を果たす者がいた可能性があり、被告人の存在が必要不可欠であるとはいえないこと、被告人が本件各窃盗の報酬と認識して報酬を受け取っていたことなども踏まえれば、本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めることはできず、第1審判決の結論は是認できない。
第2 当裁判所の判断
しかしながら、原判決の前記判断は是認することができない。その理由は、以下のとおりである。
1 第1審判決及び原判決の認定並びに記録によると、本件の事実関係は、次のとおりである。
(1) 被告人は、令和3年10月初旬頃、インターネット上の掲示板で知り合った氏名不詳者らから、現金自動預払機から現金を引き出す「仕事」の依頼を受け、暗証番号が記載された他人名義のキャッシュカード複数枚の交付を受けた。被告人は、氏名不詳者らから、平日午前9時頃から前記キャッシュカードを所持して現金自動預払機付近で待機し、電話の指示で直ちに現金を引き出すこと、報酬は引き出した現金50万円につき1万円であることなどを伝えられた。被告人は、この「仕事」が特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を引き出すものである可能性を認識した上で、これを引き受けた。
(2) 被告人は、前記依頼の翌日以降、平日午前9時頃から午後5時頃までの間、現金自動預払機の設置場所付近で待機し、氏名不詳者らから電話で指示があれば直ちに、前記キャッシュカードのうち指示されたものを用いて現金自動預払機から現金を引き出し、氏名不詳者らの指示に従って、引き出した現金から報酬を差し引き、残りを指定されたコインロッカーに入れるなどして回収役の者に交付した。被告人は、暗証番号が記載された他人名義のキャッシュカードを更に受け取るなどしながら、これと同様の流れで、本件各窃盗に及んだ。
2 以上の事実関係は、被告人の引き出す現金が詐欺等の犯罪に基づいて被告人の所持するキャッシュカードに係る預貯金口座に振込送金されたものであることを十分に想起させ、本件のような態様の電子計算機使用詐欺も、被告人が想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていたといえるから、被告人は、そのような電子計算機使用詐欺に関与するものである可能性を認識していたと推認できる。被告人は、この認識の下、本件各電子計算機使用詐欺の当日午前9時頃から現金自動預払機の設置場所付近で待機し、氏名不詳者らにおいても、被告人が待機し現金の引き出しを行うことを前提として、本件各電子計算機使用詐欺に及んだといえるから、本件各電子計算機使用詐欺の初回の犯行までには、氏名不詳者らが行い、被告人が現金の引き出しを担う電子計算機使用詐欺について、暗黙のうちに意思を通じ合ったと評価することができる。そして、被告人は、氏名不詳者らから指示を受けて、Aらが振込送金する操作をしてから短時間のうちに現金を引き出しているところ、被告人が果たした役割は、本件各電子計算機使用詐欺による財産上不法の利益を直ちに現金として引き出して確保するという本件各電子計算機使用詐欺の犯行の目的を達成する上で極めて重要なものということができる。したがって、本件の事実関係の下においては、被告人と氏名不詳者らとの間で、本件各電子計算機使用詐欺の共謀が認められる。
原判決は、被告人が本件各電子計算機使用詐欺の行為態様等を全く把握しておらず、氏名不詳者らにおいても被告人の認識の有無について関心を有していなかったことを重視するが、そのような事情は意思連絡を認める妨げとはならない上、被告人の認識内容を具体的に検討することなく、本件各電子計算機使用詐欺についての意思連絡を否定しており、不合理といわざるを得ない。また、原判決は、被告人が本件各電子計算機使用詐欺の実行行為を何ら分担していないこと、被告人以外にも振込先口座から現金を引き出す役割を果たす者がいた可能性があり、被告人の存在が必要不可欠であるとはいえないこと、被告人が本件各窃盗の報酬と認識して報酬を受け取っていたことなどを指摘して、共謀が認められないともいう。しかし、それらの事情は、被告人が氏名不詳者らと意思を通じ合って本件各電子計算機使用詐欺による財産上不法の利益を確保するという極めて重要な役割を担ったことに鑑みれば、共謀を否定する事情となり得ない。
3 したがって、原判決が、被告人に本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めることができないとした点には、事実誤認があり、これが判決に影響を及ぼすことは明らかであって、原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものと認められる。
よって、刑訴法411条3号により原判決を破棄することとし、以上の検討によれば、本件各電子計算機使用詐欺の共謀を認めた第1審判決の判断は、その結論において是認することができ、また、記録に基づいて検討すると、被告人のその余の控訴趣意もいずれも理由がなく、結局、第1審判決を維持するのが相当であるから、同法413条ただし書、414条、396条により被告人の控訴を棄却し、原審における未決勾留日数の算入につき刑法21条、原審における訴訟費用につき刑訴法181条1項ただし書を適用することとし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。なお、裁判官平木正洋の補足意見がある。
裁判官平木正洋の補足意見は、次のとおりである。
私は、法廷意見に賛同するものであるが、法廷意見が「本件のような態様の電子計算機使用詐欺も、被告人が想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていたといえる」とした点について補足しておきたい。
1 原判決は、被告人に本件各電子計算機使用詐欺の共謀共同正犯が成立しない理由として、被告人が、本件各電子計算機使用詐欺の行為態様等の本質的な部分を含め、その内容を全く把握していなかったという点を重視している。
確かに、いわゆる出し子であった被告人は、本件各電子計算機使用詐欺の共犯者らから、本件各電子計算機使用詐欺の行為態様について説明されていなかった。また、電子計算機使用詐欺罪の構成要件の内容は、通常の詐欺罪のそれと比べると、一般人にとって理解しにくいものであるといえる。さらに、本件各電子計算機使用詐欺の行為態様は、実行犯(いわゆる架け子)が、被告人の所持するキャッシュカードに係る預貯金口座に振込送金をしたAら(本件各電子計算機使用詐欺の実質的被害者)を、間接正犯の道具として利用し実行したというやや特殊なものであった。
2 しかし、被告人は、共犯者(指示役)から依頼された「仕事」が、特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を現金自動預払機から引き出すものである可能性を認識した上で、これを引き受けていたものであって、この認識は、実行犯の行う特殊詐欺等の犯罪行為が、うそをつき人を欺いてその者に現金自動預払機を操作させ振込送金させるという行為態様のものであるとの未必的認識を含むものであったと認められる。
3 ところで、本件各電子計算機使用詐欺の犯行において、電子計算機使用詐欺罪の電子計算機に虚偽の情報を与える行為(刑法246条の2)は、うそをつき人(Aら実質的被害者)を欺いてその者に振込送金の操作であると気付かせないで現金自動預払機を操作させ振込送金させるというものであった。そして、被告人が想定していた犯罪の一つである特殊詐欺(振り込め詐欺)の犯行においては、詐欺罪の人を欺いて財物を交付させる行為(同法246条1項)は、うそをつき人(詐欺の被害者)を欺いてその者に振込送金の必要があると誤信させて現金自動預払機を操作させ振込送金させるというものである。両者を比較すると、各構成要件における中核的な行為態様は、いずれも、うそをつき人を欺いてその者に現金自動預払機を操作させ振込送金させるというものであることが分かる。
前記2のとおり、出し子であった被告人が、実行犯の行う犯罪行為に対して有していた未必的認識は、うそをつき人を欺いてその者に現金自動預払機を操作させて振込送金させるという行為態様に対する認識を含むものであったから、前記の中核的な行為態様に対する認識を包含するものであったと評価することができる。本件のように実行犯(架け子)と出し子の(指示役を介しての)黙示の意思連絡が問題となる事案において、実行犯の行う犯罪行為に対する出し子の認識としては、この程度のもので足りるというべきであろう。もとより、出し子において、実行犯の行う犯罪行為が電子計算機使用詐欺罪の構成要件に当てはまるものであるかどうかまで認識する必要はない。
4 以上によれば、前記2の認識を有していた被告人にとっては、本件のような態様の電子計算機使用詐欺も想定し得る詐欺等の犯罪の範囲に含まれていたといえるのである。」
本判例は、依頼を受けて現金自動預払機付近で待機し電子計算機使用詐欺の犯行により増加した預貯金を直後に引き出すなどした者に電子計算機使用詐欺の共謀が認められた事例です。
すなわち、還付金等を受け取ることができる旨誤信させられていた者に電話で指示して、振込送金の操作であると気付かせないまま、現金自動預払機で振込送金する操作を行わせ、被告人らの管理する預貯金口座の残高を増加させる電子計算機使用詐欺において、被告人が氏名不詳者らから依頼を受けて同口座のキャッシュカードを所持して現金自動預払機付近で待機し、氏名不詳者らから電話で指示があれば直ちに同キャッシュカードを使用して現金自動預払機から現金を引き出し、報酬を差し引いた残りを回収役に交付したこと、被告人が特殊詐欺等の犯罪行為によって得られた現金を引き出すものである可能性を認識していたことなどの本件事実関係の下では、被告人と氏名不詳者らとの間で、電子計算機使用詐欺の共謀が認められるとしました。
本判例は、共謀の有無に関して、第1審判決と最高裁の判断が割れたものとして注目されました。
共謀共同正犯に関しては、最高裁大法廷昭和33年5月28日刑集12巻8号1718頁・刑法百選Ⅰ【8版】75事件(以下「練馬事件判決」といいます。)、最高裁平成15年5月1日刑集57巻5号507頁・刑法百選Ⅰ【8版】76事件(以下「スワット事件決定」といいます。)等が先例としてあります。最高裁令和3年2月1日刑集75巻2号123頁・重要判例解説令和3年度刑法2事件(リモートアクセス等に関する判例)に関する判例タイムズ1494頁51頁から52頁までは「一般的に、共同正犯が成立するためには、2人以上の者の間に共同実行の意思及び共同実行の事実が存することが必要であるとされている。もっとも、練馬事件判決……やスワット事件決定……等の判例は、実行行為を直接分担しない者について共謀共同正犯の成立を認めており、実務は、実行共同正犯と共謀共同正犯を統一的に把握し、共謀を実行時における犯罪の共同遂行の合意と理解した上、「自己の犯罪」を遂行する意思(正犯意思)を有する者を狭義の共犯とする主観説によってきたといわれている。学説においても、共謀共同正犯を肯定する見解が多数となっており、実行の分担に準ずるような重要な役割を果たしたと認められる場合に共同正犯性を肯定すべきとする見解が有力である。」としています。
本判例も上記の確立した判例法理の判断枠組みを踏襲し、共謀の成否を判断しています。
事実認定に関する事例判断として今後の研究が待たれるところです。本判例に関する評釈として、警察学論集79巻1号116頁があります。
特殊詐欺の故意及び共謀の認定に関しては、最高裁平成30年12月11日刑集72巻6号672頁(以下「平成30年判例」といいます。)が、現金送付型(マンションの空室への現金送付型)の特殊詐欺事案の受け子に関し、詐欺罪の故意及び共謀を認めている事案があります。平成30年判例は、一般論として、受け子の故意として、単に漠然と違法行為に基づくものを受領したとの認識では足りず、詐取金品を実際に受け取るまでの間に、共犯者が何らかの方法で被害者を欺罔し、誤信に基づいて送付された財物を受け取ることの認識は必要としつつ、指示又は依頼を受けて、配達される荷物を名宛人になりすまして受け取り、回収役に受け渡す行為を複数回繰り返して報酬を受け取っていたといった外形的事実が、荷物が詐欺を含む犯罪に基づき送付されたことを十分に想起させるものであり、詐欺の可能性があるとの認識が排除されたことをうかがわせる事情が見当たらない限り、詐欺の未必的な故意が認められるとの認定手法を示しています。平成30年判例は、当該事案においては、故意があれば、共謀も認められると判断しています。
本判例は、平成30年判例の特殊詐欺の受け子の故意の認定方法が出し子にも妥当することを示しています。本判例は、平成30年判例と類似の表現を用いており、出し子について、外形的事実から、引き出した現金が詐欺等の犯罪行為に基づくものであることを十分に想起させるような事情があれば、詐欺等の可能性があるとの認識が排除させたことをうかがわせる事情が見当たらない限り、詐欺等の未必的な故意が認められるとした。
出し子事案においては、
①ATMで現金を引き出すだけの誰でもできる簡単な仕事であるのに、通常のアルバイトに比して高額な報酬が得られること、②面識のない他人名義のキャッシュカードを暗証番号とともに渡され、ATM付近で待機して、指示に従って直ちに数十万円又は数百万円単位で大金を引き下ろすものであること、③引き下ろした現金についてはロッカーや公衆トイレを使って受け渡すこと、④仕事の依頼内容も通常の経済活動とかけ離れた不自然性があることなど公にできない依頼であることが外形的事実から一見して明らかな場合が多いという特徴があります。出し子が置かれた状況を具体的に想像し、お金に困って、不安に思いつつも、単価の高い仕事を見つけ、通常の社会経済活動とは異なる不自然さ不合理さがある中で、それをどのように理解して出し子行為をしたかを評価・認定することは、故意の認定に不可欠です。
平成30年判例は、詐欺罪の一部である受領行為に関与している受け子に関するものであったのに対し、本判例は、詐欺罪(電子計算機使用詐欺罪)が既遂になった後に引出行為のみを行い、詐欺罪(電子計算機使用詐欺罪)そのものに関与していない事案でした。本判例は、「被告人の引き出す現金が詐欺等の犯罪に基づいて被告人の所持するキャッシュカードに係る預貯金口座に振込送金されたものであること」を認識していれば、出し子に詐欺等の故意を認めることができるとしました。つまり、受け子は、受け取ったものについて、出し子は、ATMから引き出した現金について、(前者は詐欺罪の一部であり、後者は詐欺罪(電子計算機使用詐欺罪)の一部ではないとの違いはあるものの)詐欺等の被害品であるとの認識がありさえすれば、詐欺等についての故意責任を問う余地があり、その限りにおいて、当該受取り行為や引き出し行為が当該犯罪の一部か否かに差異はなく、出し子と受け子の故意の認定方法に違いは生じないとしました。
本判例は、詐欺等の認識の中に電子計算機使用詐欺罪における還付金詐欺も含まれうることを明らかにした点にも意義があります。故意とは、犯罪事実の認識・認容であり、具体的な罪名を認識している必要がないことは争いありませんが、還付金詐欺の詳細、つまり還付金が受け取れると被害者を誤信させてATMを操作させ、被害者の意思によらず、特殊詐欺組織が管理する口座に送金手続をさせることによって財産上不法の利益を得たという、出し子が引き出した現金をだまし取られた具体的な経過まで認識している必要があるとすれば、電子計算機使用詐欺罪の故意を認めることは困難であるところ、そこまでの認識は不要であることを明確にしました。すなわち、補足意見を踏まえると、還付金詐欺の出し子の認識としては「うそをつき人を欺いてそのものに現金自動預払機を操作させて振込送金をさせるという行為態様に対する認識…程度のもので足りる」としています。還付金詐欺の出し子の事案においては、還付金詐欺の中核的な行為態様である「うそをつき人を欺いてその者にATMを操作させて振込送金させる」という認識があれば、電子計算機使用詐欺罪の未必的な認識があり、故意を認めることができるとしました。
本判例は、平成30年判例とは異なり、故意を認めた後、共謀の有無についても丁寧に判断しています。この点については、練馬事件判決やスワット事件決定に関する判例法理をもとに正犯性を判断しています。

