最高裁昭和30年11月1日刑集9巻1号14頁刑訴百選【11版】A37事件について(検察官面前調書に関する相対的特信情況)
本判例は、検察官面前調書に関する相対的特信情況(刑訴法321条1項2号本文後段)の存否の判断資料について判断した判例です。
判例を一部引用します。
https://www.courts.go.jp/hanrei/54746/detail2/index.html
「……刑訴321条1項2号は、伝聞証拠排斥に関する同320条の例外規定の一つであつて、このような供述調書を証拠とする必要性とその証拠について反対尋問を経ないでも充分の信用性ある情況の存在をその理由とするものである。そして証人が検察官の面前調書と異つた供述をしたことによりその必要性は充たされるし、また必ずしも外部的な特別の事情でなくても、その供述の内容自体によつてそれが信用性ある情況の存在を推知せしめる事由となると解すべきものである。……」
「「前の供述を信用すべき特別の情況の存するとき」とは、典型的には、公判廷における供述よりも、捜査段階の取調べにおいて検察官面前調書が作成されたときの供述(公判供述よりも「前の供述」にあたる)の方が、信用すべき特別の情況があるといえる場合である。321条1項2号後段の相対的特信情況は、調書作成時と公判期日とを対比して調書作成時の方がマシであれば要件を充たすのに対して、……上述した同条項3号にいう絶対的特信情況は、ゼロから特信情況を立証しなければならない。この点で、相対的特信情況は絶対的特信情況に比べて、緩和された要件だといえる。」(「基本刑事訴訟法Ⅰー手続理解編〔第1版〕」264頁)とされます。
相対的特信情況と絶対的特信情況の違いについては、平成20年度新司法試験刑事系科目第2問(刑訴)においても問われており、同問題の出題趣旨においては下記のように指摘がされています。
https://www.moj.go.jp/content/000006426.pdf
「本事例で問題になる「特に信用すべき情況」の意義・解釈等については的確に論じなければならない。例えば,本件ノートを刑事訴訟法第321条第1項第3号に該当する書面であると考えた場合には,証拠能力の要件要素である「特に信用すべき情況」の理論的意味に留意しつつ,その存否につき,供述の内容そのものを直接に判断するのではなく,供述に付随する外部的な情況を主たる考慮事情として判断しなければならず,また,他の供述と比較するのではなく,その供述自体にかかわる絶対的な判断が要求されていることなどを論述することが必要である。」(出題趣旨7頁)
特信情況の判断についてはこのように刑訴法321条1項2号後段の検察官面前調書(PS)と同条同項3号の警察官面前調書(KS)とでは異なるものであることを理解しておく必要があります。

