最高裁令和7年10月21日刑集79巻7号403頁(窃盗、建造物侵入被告事件・「建造物」に関する判例)
本判例は、コンテナ倉庫が刑法130条にいう「建造物」に当たるとされた事例判断です。
判例を引用します。
https://www.courts.go.jp/hanrei/94876/detail2/index.html
「弁護人髙田偉貴の上告趣意は、単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑訴法405条の上告理由に当たらない。
なお、所論は、第1審判決判示第6のコンテナ倉庫(以下「本件コンテナ倉庫」という。)は、土地に定着していないから、令和4年法律第67号による改正前の刑法130条にいう「建造物」に当たらない旨主張する。しかし、原判決の認定及び記録によれば、本件コンテナ倉庫は、奥行き約1240㎝、幅約240㎝、高さ約288㎝の大きさの鉄製のコンテナが土地上に設置されたものであり、設置されて以降3年10か月以上の間、移動されることなく、電気を電柱から電線で引き込んでタイヤ等を保管する倉庫として継続的に使用されていたというものである。以上の事実関係の下では、本件コンテナ倉庫は、移動が容易でなく土地に置かれて継続的に使用される物であり、その形態及び使用の実態に照らし、社会通念上土地に定着しているといえるから、上記改正前の刑法130条にいう「建造物」に当たるというべきである。基礎が打たれていないこと等の所論が指摘する事情は、本件コンテナ倉庫が上記「建造物」に当たることを否定すべきものとは認められない。したがって、被告人について、建造物侵入罪の成立を認めた第1審判決を是認した原判決の判断は正当である。
よって、刑訴法414条、386条1項3号、181条1項ただし書、刑法21条により、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」
「建造物」とは、屋根を有し支柱などによって支えられた土地の定着物で、人が出入りすることのできる構造のものであり、学校や工場など、住居用以外の建造物一般のことであるとされています。例えば、住居に隣接する物置小屋は「建造物」であるとされます(以上につき「基本刑法Ⅱーー各論〔第4版〕」83頁)。
本判例は「本件コンテナ倉庫は、奥行き約1240㎝、幅約240㎝、高さ約288㎝の大きさの鉄製のコンテナが土地上に設置されたものであり、設置されて以降3年10か月以上の間、移動されることなく、電気を電柱から電線で引き込んでタイヤ等を保管する倉庫として継続的に使用されていた」ことに着目し、「本件コンテナ倉庫は、移動が容易でなく土地に置かれて継続的に使用される物であり、その形態及び使用の実態に照らし、社会通念上土地に定着しているといえるから、上記改正前の刑法130条にいう「建造物」に当たる」と判断しました。
「建造物」に関して規定する刑法の条文は刑法130条のほか、放火罪に関する刑法108条や建造物損壊罪に関する刑法260条などにもあります。
刑法108条の「建造物」に関する判例として、大審院大正3年6月20日刑録20輯1300頁(以下「大正3年判例」といいます。)があります。大正3年判例は、「建造物とは、屋根を有し、障壁又は柱材により支持されて土地に定着し、少なくともその内部に人の出入りできる建造物であることを要する」と判示しています。
刑法260条の「建造物」に関する判例として、最高裁平成19年3月20日刑集61巻2号66頁・刑法百選Ⅱ【8版】79事件があります(以下「平成19年判例」といいます。)。平成19年判例は、建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かの判断基準について、「建造物に取り付けられた物が建造物損壊罪の客体に当たるか否かは,当該物と建造物との接合の程度のほか,当該物の建造物における機能上の重要性をも総合考慮して決すべきである」とし、「本件ドアは,5階建て市営住宅1階にある居室の出入口に設置された,厚さ約3.5cm,高さ約200cm,幅約87cmの金属製開き戸であり,同ドアは,上記建物に固着された外枠の内側に3個のちょうつがいで接合され,外枠と同ドアとは構造上家屋の外壁と接続しており,一体的な外観を呈している」「本件ドアは,住居の玄関ドアとして外壁と接続し,外界とのしゃ断,防犯,防風,防音等の重要な役割を果たしているから,建造物損壊罪の客体に当たるものと認められ,適切な工具を使用すれば損壊せずに同ドアの取り外しが可能であるとしても,この結論は左右されない」と判示しています。
本判例は事例判断ではあるものの、「建造物」に関する判例として先例的意義を有するものと考えられます。

