最高裁令和7年5月21日刑集79巻4号149頁について(保釈請求却下決定に対する異議申立て棄却決定に対する特別抗告事件・刑訴法20条7号本文の除斥)
第1審の有罪判決をした裁判官が当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判に関与することの適否が問題となった判例です。第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥されるという判断を示した重要な判例です。
判例を引用します。
https://www.courts.go.jp/hanrei/94115/detail2/index.html
「本件抗告の趣意は、憲法37条1項違反、判例違反をいうほかは、単なる法令違反、事実誤認の主張である。
所論に鑑み、職権で判断する。
記録によると、頭書被告事件の控訴裁判所である札幌高等裁判所が、同被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官を含む合議体で、保釈請求を却下する決定をし、原審が、申立人からの異議申立てを棄却する決定をしたことが明らかである。
しかしながら、控訴裁判所において、当該被告事件の第1審の有罪判決をした裁判官には、事件について前審の裁判に関与したという、刑訴法20条7号本文の定める除斥原因がある。そして、控訴裁判所のする保釈に関する裁判に関与することは、控訴裁判所の裁判官としての職務の執行に当たる。そうすると、第1審の有罪判決をした裁判官は、刑訴法20条により、当該被告事件の控訴裁判所のする保釈に関する裁判についての職務の執行から除斥されると解するのが相当である。
したがって、職務の執行から除斥されるべき裁判官が関与してされた原々決定及びこれを是認した原決定には、刑訴法20条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、これを取り消さなければ著しく正義に反すると認められる。
よって、その余の抗告趣意について判断するまでもなく、刑訴法411条1号を準用し、同法434条、426条2項により、原決定及び原々決定を取り消し、本件を原々審である札幌高等裁判所に差し戻すこととし、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」
刑訴法20条は柱書で「裁判官は、次に掲げる場合には、職務の執行から除斥される。」とし、7号は「裁判官が事件について第266条第2号の決定、略式命令、前審の裁判、第398条乃至第400条、第412条若しくは第413条の規定により差し戻し、若しくは移送された場合における原判決又はこれらの裁判の基礎となった取調べに関与したとき。ただし、受託裁判官として関与した場合は、この限りでない。」と規定しています。
除斥とは、法律上当然に職務の執行から脱退せしめられることをいい、あえて裁判を要しないものと解されています。すなわち、法定の事由が存在すれば、当事者による申立てを待つまでもなく、また、格別の裁判を待つまでもなく、当該裁判官は、その事件から当然に排除されるものと解されています(以上につき「大コンメンタール刑事訴訟法〔第三版〕第1巻225頁以下参照)。最高裁昭和27年9月8日最高裁判所裁判集刑事67号1頁・判タ25号47頁も「裁判官に除斥の事由があれば、その裁判官は当該事件につき当然その職務の執行から排除される」と判示しています。
本判例以前に最高裁が除斥されると判断した判例として、最高裁大法廷昭和41年7月20日刑集20巻6号677頁があります。
「記録によれば、所論原審の判事は、第一審裁判官として、その第5回公判期日に所論証拠の取調をなしたこと、該証拠は第一審判決の判示(1)の第一の(一)および同(2)の第一の各事実の認定の用に供されていること明らかである。
してみれば、所論判事が本件において刑訴法20条7号にいう前審の「裁判の基礎となつた取調に関与した」ことは明らかであるから、同判事には除斥理由が存するものというべきである。」と判示しています。なお、判決文にある所論証拠とは、検察事務官に対する供述調書、登記簿謄本送付方依頼について(回答)と題する書面、当座預金元帳写、当座預金不渡明細、検察官に対する供述調書、押収の約束手形、請求書、注文書、注文依頼書、仮領収書、送り状、領収書でした(「大コンメンタール刑事訴訟法〔第三版〕第1巻227頁)。
除斥に関する判例として本件は先例的意義を有すると考えられます。

