最高裁令和7年11月27日令和7(し)1043について(勾留請求却下の裁判に対する準抗告の決定に対する特別抗告事件・いわゆる東大汚職事件)

 検察官の勾留請求(刑訴法208条1項)に関し、東京地裁刑事14部(令状部)の裁判官が勾留却下の裁判をしたのに対し、検察官が準抗告(刑訴法429条1項2号前段)しました。東京地裁の準抗告審は検察官の準抗告を認容しました(刑訴法432条・426条2項)。そこで、弁護側が最高裁に特別抗告(刑訴法433条1項)したところ、最高裁は原決定(東京地裁の準抗告審)を破棄し(刑訴法411条・434条・426条2項)、検察官の勾留請求を改めて却下しました(刑訴法432条・426条1項)。

 まず、判例を引用します。

https://www.courts.go.jp/hanrei/95139/detail2/index.html

「1 本件抗告の趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反の主張であって、刑訴法433条の抗告理由に当たらない。

2 所論に鑑み、職権で判断する。

 本件被疑事実の要旨は、「医療関連商品の製造販売等を営む会社の営業所長であった被疑者が、同社の営業担当者と共謀の上、国立大学医学部附属病院の医師に対し、同社の取り扱う医療機器を使用するなどの有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼等の趣旨で、同社名義の口座から同病院専用名義の口座に40万円を振込入金し、このうち34万4000円相当の、同医師が選定した物品の購入等をすることができる利益を得させ、もって同医師の職務に関し賄賂を供与した」というものである。 原々審は、勾留の必要性がないとして勾留請求を却下した。これに対し、原決定は、本件事案の性質・内容(対向犯である上、更に多くの関係者が様々な立場で関わっていることや、被疑者と関係者らとの人的関係等)、被疑者や関係者らの供述内容及び供述状況に加え、想定される争点について関係者らの供述による立証が重要となる証拠構造、原々裁判時における捜査の進捗状況等を踏まえると、被疑者が関係者と通謀するなどして、罪体及び重要な情状事実について罪証を隠滅するおそれがあり、このようなおそれは、被疑者が罪証隠滅行為に及ばない旨誓約しているなどの事情のみからは否定できず、被疑者の捜査に対する対応状況等も踏まえると、逃亡のおそれもないとはいえず、勾留の必要性も認められるとして、罪証隠滅のおそれが高度であることを前提に、原々裁判を取り消した。

 本件において勾留の必要性の判断を大きく左右する要素は、罪証隠滅の現実的可能性の程度であると考えられる。この点につき、記録によれば、原々裁判は、原決定指摘の事情も考慮の上で、罪証隠滅の現実的可能性を肯定しつつ、客観的証拠の収集及び客観的証拠を踏まえた関係者らからの事情聴取が相当に進んでいること、被疑者自身も数か月にわたって任意の取調べにおおむね応じていたこと、被疑者が既に上記会社を退職しており、同社関係者が従前の供述を翻して被疑者に有利な供述をするというような強い関係性まではうかがわれないことに鑑みて、罪証隠滅の現実的可能性が高くはないと判断したものと認められる。このように、原々裁判の判断は、一件記録に基づき、罪証隠滅の現実的可能性の程度を基礎付ける事情を具体的に検討した上でされたものであって、その判断理由にも一定の合理性があるといえる。しかるに、原決定は、罪証隠滅の現実的可能性の程度について、原々裁判が判断の基礎としたものとほぼ同一の事情を指摘するのみで、これらの事情に関する原々裁判の評価が不合理であるとする理由を実質的に示すことができていないといわざるを得ず、原々裁判と異なる判断をした理由を示したものとはいえない。

 そうすると、勾留の必要性を否定した原々裁判を取り消して、勾留を認めた原決定には、刑訴法60条1項、426条の解釈適用を誤った違法があり、これが決定に影響を及ぼし、原決定を取り消さなければ著しく正義に反するものと認められる。

3 よって、刑訴法411条1号を準用して原決定を取り消し、同法434条、426条2項により更に裁判をすると、上記のとおり本件について勾留請求を却下した原々裁判に誤りがあるとはいえないから、本件準抗告は、同法432条、426条1項により棄却を免れず、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり決定する。」

 原々裁判というのは東京地裁刑事14部(令状部)の裁判官のした勾留却下の裁判、原決定は準抗告審を指します。

 最高裁が特別抗告を認容することは極めてまれであることに加え、この判例は勾留の実体的要件の一つである罪証隠滅の現実的可能性(刑訴法60条1項2号)等に関し、判断をしています。過去の判例(最高裁平成26年11月17日判タ1409号123頁②・刑事訴訟法判例百選【11版】14事件)を再確認したものといえるでしょう。なお、「罪証隠滅のおそれ」の判断においては、①罪証隠滅の対象、②罪証隠滅の態様、③罪証隠滅の客観的可能性及び実効性(罪証隠滅の余地)、④罪証隠滅の主観的可能性の4点を参考にするとされています(「新プロシーディングス刑事裁判」(司法研修所刑事裁判教官室編)85頁参照)。

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